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 愛しい恋人から笑いかけられると、ミニブタも矛を収めない訳にはいかなかった。 「そ、そうだね…。今夜から静かに眠れるなら…」  そう言って、ミニブタはウサギに確認するような眼差しを向けた。  しかし、ウサギはたちまち暗い表情になった。ちょっと演技がかっている。 「申し訳ありません。このシーンは完璧ですが、他にもまだ完成していないシーンがたくさんあって…」 「えっ?!」 「これで終わりじゃないの??」  ミニブタだけでなく、アヒルも驚いている。 「まだ稽古が続くってこと?」 「もう少し…、あと少しで完璧な舞台ができあがりそうなんです。でも、完成することなど、永遠に不可能なのかもしれない…。時は移り変わるものだ。その時々で、あらゆる存在が変化していく。その変化の渦の中で、我々はもがき、訴え、…」  ウサギは自分の世界に入ってしまったようだ。  雲が晴れて月が出てきた。ミニブタと恋人は部屋に戻った。アヒルももう少しで部屋に帰るだろう。  ウサギもこの日の稽古を終えたら、この舞台から退場する。 (終)
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