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 ウサギは深呼吸してから鏡の前に立った。  鏡の中の自分は、背筋が伸びた、美しい立ち姿をしている。 (よし。悪くない…)  次に、緩やかに身体全体を動かして、いくつかのポーズを取る。  顔を反らせた姿勢で再び鏡を覗きこむと、自身を見つめる流し目と目が合った。 (美しい…)  しかし、ウサギの気持ちは沈んでいた。  ウサギは舞台俳優で、来月の公演で主演を務めることになっているのだが、いまだ役の気持ちが掴めていないのである。 (美しさは武器だ。舞台に立った僕の姿を見るだけで、観客は満足するだろう。それは認めるさ……。だけど…)  ウサギは鏡から目を背けて、こぶしを握りしめた。 (それでは僕が満足できないんだ!役者である僕は、自分の外側の美しさだけでなく、内側にあるエネルギーをも目に見える形にして、観客に訴え、表現しなければいけないんだ…!)
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