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ウサギはさらに激しく体を動かし始めた。緑色のマントがばさりと跳ね上がり、空中で見事な半円形に広がって、またウサギの肩の上に落ちた。
無念を伝えるために冥土の底からやって来た父の怨霊と、父のその思いを知った主人公の苦悩が、ウサギの迫真の演技から伝わってくる。
ウサギが静止した。どうやら、これで終わりのようだ。
ぱちぱちぱち…と、アヒルが手を叩いた。
「素晴らしかったよ」
「本当に。感動したわ」
「…」
ウサギは黙って一礼する。
無言だったミニブタが、怒っているような声をあげた。
「この叫び声は、ウサギの舞台の稽古の声だったってこと?」
ウサギとアヒルが、ちょっとぽかんとしたような顔でミニブタを見た。どうしてミニブタが怒っているのか、二人には分からないのだ。
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