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全身 黒ずくめ。ナイロン製の手袋の手だけは白い。
頭から すっぽりと被るマスクを付けていて、それは 笑った子供の人形の顔を模してあった。
俺の隣に立った女が、ビデオカメラのレンズを俺に向けている。
見下ろしながら撮っていた女がしゃがみ、俺の横顔を撮り始めた。
顔を逸らすと 女は立ち上がり、ゆっくりと前に回って 上から下へと全身を撮り出した。
拘束された両手の感覚がなくなったことに気づく。
やめてくれ 頼む 怖い 怖い...
女が後ろ向きのまま下がって行く。
荒い息をしながら見上げると、男から懐中電灯を受け取っていた。
男が俺に向かって歩いてきた。白く光る鋭利な物を持って。
「や... て... 」
口中も喉も乾き切っている。声は出ない。
男が俺の前にしゃがむと、女が男の真後ろに立ち、懐中電灯の明かりとビデオカメラを向けている。
男の手にある白く鋭利な物... 医療用メスに光が反射した。
突然、頭の中がクリアになった。
逃げなくては... と膝を立てた時に、メスが鳩尾に差し込まれた。
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