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どのくらい、草原に立っていただろう?
... “美しくあろう?”
界の番人だという 花魁か何かのように派手な着物を着た女は、縁の赤い切れ長の眼を流して
... “此処は、月にある処よ。
暫し 安らぐが良い” と、霞のように消えてしまった。
仕事の休憩中、いつも見上げていた月に、こんな場所があったのか...
幼い頃は、実家のバルコニーから、父や母とも見上げた。
小学生の時には 天体望遠鏡を買ってもらって、嬉しくて毎晩 覗いていた。
シリウスや金星は 上手く見れなかったけど、土星の輪や月は綺麗に見えて、わぁ... と、本気で感動した。
月の海と呼ばれる模様まで見たことがあるけど、この草原は見えなかった。
きっと、あっち側に居たから見えなかったんだろうな。
生きていられていたから。
凪いだ草原の草の先が揺れているのは、風なんだろうか?
俺の身体がもう、それを感じないだけなんだろうか?
それとも、日差しに輝くために草自身が揺れているのか...
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