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でも、差し出された手に載せた手は、柚葉ちゃんの もう片方の手に挟まれて 「こういう時は、こうするんです」と 大きな眼で見上げられて言われた。 挟まれた 俺の手から、闇のような黒い靄が立ち昇ったかと思うと、それが 大神の足下に引き寄せられて消えていく。 腹の底に湧き出したものが消えている... この子は、こういう事が出来る子なんだ... 「では、行きましょうか?」 柚葉ちゃんが、おかっぱの毛先を揺らして言った。 手を繋いだままなのが気になるが 「最初は、迷ってしまうかもしれないから」と 逆に気を使われてしまって、ごめん と謝りたくなる。 「ここから入りますよ」 連れて来られたのは、蒼白い星々の河の淵だった。 「あの、扉から とかじゃないの?」と 聞くと 「界の扉は、界を跨ぐ時だけなんです。 あなたは もう、こちら側の住人ですから。 間違って入ってしまった方は、あの橋を渡って 現世(うつしよ)に戻るんです」と 教えてくれた。 柚葉ちゃんが指差した方向には、神社で見るような 山なりになった橋が架かっている。
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