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鉄のドアは重かったが、意外と簡単に引いて開けることが出来た。
昼間でも、さすがに地下は暗い。
両方のドアを開け放って、割れた窓からの日差しに頼りながら 階段を降りてみる。
地下は、L字型の建物の右側部分だけで、待合室の下にはないようだ。
左側は壁になっている。
エレベーターに地下のボタンがない理由が分かった。
スマホのライトを点けて奥に進む。
地下通路を照らすには頼りない灯りだ。
そして、思った通り。
ドアはなく、棚が並ぶ空っぽの備品室の隣には、霊安室の札が貼ってある。
その奥にも部屋があるが、何の部屋かは分からない。
霊安室と奥の部屋にはドアがあった。
「今田」
呼び掛けてみると、スマホの通知音がなった。
メッセージには、“奥の部屋だよ” とある。
何で声で返事をしないんだ?
今、俺が呼んだ声が聞こえたから、メッセージを入れてきたんだろう?
おかしいとは思ったが、気味の悪さが先に立つ。
早く奥のドアを開けて、用を済ませて 外へ出たかった。
倒木の前に停めた車へ戻りたい。
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