8/13
前へ
/298ページ
次へ
鉄のドアは重かったが、意外と簡単に引いて開けることが出来た。 昼間でも、さすがに地下は暗い。 両方のドアを開け放って、割れた窓からの日差しに頼りながら 階段を降りてみる。 地下は、L字型の建物の右側部分だけで、待合室の下にはないようだ。 左側は壁になっている。 エレベーターに地下のボタンがない理由が分かった。 スマホのライトを点けて奥に進む。 地下通路を照らすには頼りない灯りだ。 そして、思った通り。 ドアはなく、棚が並ぶ空っぽの備品室の隣には、霊安室の札が貼ってある。 その奥にも部屋があるが、何の部屋かは分からない。 霊安室と奥の部屋にはドアがあった。 「今田」 呼び掛けてみると、スマホの通知音がなった。 メッセージには、“奥の部屋だよ” とある。 何で声で返事をしないんだ? 今、俺が呼んだ声が聞こえたから、メッセージを入れてきたんだろう? おかしいとは思ったが、気味の悪さが先に立つ。 早く奥のドアを開けて、用を済ませて 外へ出たかった。 倒木の前に停めた車へ戻りたい。
/298ページ

最初のコメントを投稿しよう!

209人が本棚に入れています
本棚に追加