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「お見通し、か。でも、私が何を企んでいようが、もうすぐ消し飛ぶみんなには関係ないけどね」
「は?」
意味が分からない。
水戸部はズボンのポケットから何かを取り出した。たぶんいい物ではない、手のひら大の何か。
「もっと正確に言うと、この山一帯が消し飛ぶ。私達の支援者が配備した最新式のミサイルで」
「なるほど……デウス・エクス・マキナですか」
間髪入れず、土門が不思議な単語を口にした。ますます意味が分からない。
「土門さん、そのデウス何とかって?」
「機械仕掛けの神、という意味の演劇用語ですよ。例えば、突然神様が現われて全てが解決するような、ある種の味わいがある展開のことです」
味わい? と疑わしげに言ったのは火宮だ。
「ちなみに、ここにあるのがスイッチだ。もう押したから、あと20秒ってところかな」
「ええー……」
「ちょ、ちょっと、あり得ないよこんなの!」
女子大生の悲鳴混じりの声をよそに、ゴゴゴゴ、という地鳴りのような大変不穏な音が聞こえてきた。イメージしていたミサイルの音よりも重厚感がある。
どうしよう。どうすればいい? 現在地は山の中。武器も連絡手段も持ち合わせていない。こんな状況で自分に何ができる?
「10秒前。9、8――」
天を仰いだ水戸部が死のカウントダウンを始めた。彼自身も巻き込まれるはずなのに、その表情は神々しいほどに安らかだった。頭の中が真っ白になり、木岡は目をきつくつぶって耳を塞いだ。
その時だった。
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