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「はい、そこまでです」
場違いなセリフに薄目を開けると、土門が片手を高く上げて静止しているところだった。
「え? 何? ミサイルは?」
「今止めているところです。僕の超能力で」
「超能力!?」
「見て! 本当にミサイルが止まってる! あそことあそこ、それにあっちも」
空を指差した火宮に釣られるように、木岡も空を見た。ゴゴゴと力強く響いていたあの音も半分かそれ以下の音量になった。
まるで意味が分からない。あまりの急展開に、ただ呆然とすることしかできなかった。
「土門君……君は一体……」
「見ての通り超能力者ですよ、水戸部さん。使うつもりはありませんでしたが、出し惜しみしている場合ではないようなので」
「デウス・エクス・マキナか」
水戸部は眼鏡の位置を人差し指で直しつつ、疲れたように呟いた。土門は例によって胡散臭い微笑を浮かべる。
「ミサイルは僕が後で太平洋にでも沈めておきます。少々手こずりそうなので、後のことはお二人に任せていいですか?」
「正直、悪い夢でも見てるみたいだけど、木岡君もいるから……木岡君?」
この時、木岡は土の上に転がっていた野球ボールくらいの石を拾い上げていた。角度を変えつつまじまじと観察する。
これだ、と思った。
「ふふ……ハハハハハッ」
木岡は喉の奥から、いや腹の底から笑った。現在進行中の信じられない流れに対してなのか、自分のナイス発見に対してなのか、自分でもよく分からずに笑った。他の3人の視線が集まるのを感じる。
「見つけた! 『時空石』だ! まさかこんなところで見つかるなんて!」
「じくう……せき?」
おずおずと復唱する火宮に笑顔で頷く。
「そう。実は俺、この9月を繰り返してるタイムリーパーなんだ。もう4巡目なんだけど、どうしても破滅の未来が変えられなくて……でも、これで世界が救える! そうだ、土門さん。できたら一緒に来て超能力で助けてくれないか?」
「やれやれ。代わりに一杯おごってくださいよ?」
彼が柄にもなく優しく微笑むのを確かめて、木岡は時空石を持ったこぶしを突き上げた。上を向いた目に強い光が降り注ぐ。
「さあ、開け時空の――」
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