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白い布が落ちてきた。
はらり、はらり。ゆらり、ゆらり。
秋の澄んだ青い空に、まるで雲が千切れ落ちてきたかのようだ。
ゆっくりと。
右にひらり。左にくるり。
その白いものだけが、動いている。
青い空を背景に、白い布が舞い落ちる。
そんな風に思ってしまうくらい、僕は思考が停止していた。
瞬きを忘れた目から、涙が一筋落ちていく。
この白さを、僕は決して忘れられないだろう。
権力者の降伏を示す、白い布。
僕を、絶望と恐怖へ落とす白。
僕はこれから、民衆派の連中に捕まるだろう。
僕が支持していた権力者が失墜したのだから。
正義の表と裏。
結局はこの白い布と変わらない。表も裏もどちらも白。
なのに、調子に乗った過去は白にはならない。
地面に落ちた白い布が、人々の靴跡に汚れていくのを、引きずられながら僕はただ眺めた。
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