0人が本棚に入れています
本棚に追加
***
さらに30分後。
「来た来た、『竜急便』!」
『愛フォン』を置いて、クルクル髪の女の天使が窓を開けると、外からひもみたいな龍がリビングに入ってきた。
「ちょっと遅かったんじゃない? まあ、この雲高いから仕方ないか」
「リュー」
「フフ、変わった鳴き声」
天使は龍の体にかかっていたリングを受け取る。なぜか風船がくくりつけてあったが、そんなことは大したことではなかった。
「これよこれ! Shin様のリング! 本人がライブで使ってるのと全く同じモデルなんて。あ、本当に同じマークが入ってる!」
興奮しつつ、次は表面の小さなボタンを押してみた。全体がパッと明るく光った。無論、グループ内でのShinのイメージカラー・薄オレンジ色だ。
「うわーこの色、Shin様の優しさそのものだよ。あー幸せ!」
注文してよかった、地上にShinというアイドルがいてよかったと、天使はリングに頬ずりした。そこでようやく龍の存在を思い出す。
「ごめんなさいね。届けてくれてありがとう」
「リュー」
風船を外して、細長い体に軽く結びつける。窓まで運んで龍を放すと、広い空へとのびのびと飛んで――。
「リュ!?」
ひもみたいな龍は少しずつ上昇していく。もしかすると本人の意思ではなく、風船に引っ張られているのかも知れない。
「大丈夫……だよね? 龍だし」
うららかな春の午後、だんだんと小さくなっていく白い姿。天使は日差しの暖かさを感じながら、念のため『竜急便』に一報入れておこうと考え直した。
最初のコメントを投稿しよう!