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ある春の放課後。
ヒューン、と晴れた空から何かが落ちてきた。
「何だ今の?」
今まさに、下校しようと中学の校庭の横を歩いていた俺とカケルは、小走りで近くの花壇に向かった。
土の上で、輪が光っている。直径10センチかそこらの持ちやすい大きさで、薄いオレンジ色のまばゆい光を放出している。
「これって……」
「天使の輪だ!」
突然カケルが大声で言った。
「は?」
「ほら、天使が頭に乗せてるやつ。知らないの?」
「いや待て。どう見てもただの光るリングだろ。お祭りとかで売ってるやつじゃないか?」
「これがあんな安物に見えるのか? お主の目は節穴か?」
それはお前や。
「あー、きっと金髪青目の可愛い天使の輪だって。テンション上がるわー」
なぜか頑なに天使の輪だと思い込んでいるようなので、俺は無駄に反論して体力を消耗するのをやめた。輪を大事に握り締めている友人の夢を壊すのも可哀想だ。
その時。
ヒュルヒュル、と空から何かが落ちてきた。
「今度は何だ?」
「天使ちゃんの涙とか?」
「何で急にロマンチスト?」
2人とも上を見ていた訳ではないので、実際には空よりずっと低いところから飛んできたのかも知れない。それでも、俺は細やかな非日常にワクワクを感じていた。
別の花壇のパンジーの隙間にあったのは、30センチほどの細長いものだった。指で真ん中を摘まむと、前と後ろが重力でクニャッと垂れた。乳白色でツヤツヤしている。
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