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「これって……」
「ひもだな」
カケルは至極平らな声で言った。
「え?」
「リュ!?」
ひもが鳴いた。いや、これはひもではない。確かにロープのように細かったが、ちゃんと頭もあれば爪の尖った4本の足もある。
「どう見ても龍だろ」
「まさか。お前、龍とか信じてんの? ヤバ」
「頭に角も生えてるから! 鱗びっしりだし」
「『リュ』って鳴く龍がいるか?」
「リュー……」
2回目の鳴き声はとても悲しそうだった。天使天使と騒いでいた癖に、こっちに関しては変に厳しい。
ひも龍は俺の手の中でうなだれていたが、ふと、長い上半身(?)をカケルの方に伸ばして前足をジタバタさせた。
「どうした?」
「もしかしてこの輪か?」
俺は体を握っていた手を離してやった。カケルが光る輪を差し出すと、ひも龍はその細長い体を半分ほど輪にくぐらせた。小さな前足で輪をつかみ、背中と足でフラフープみたいに――足が短いのでだいぶ斜めだが――構える。そのまま、全身を小刻みにプルプルさせながら、ゆるゆると飛んでいきそうになった。
「待てって。無理すんな」
輪をつかんですぐ手元に引き戻す。ひも龍は不満げに鼻息を吐いたが、重量オーバーなのは明らかだ。
「こいつ、これで落ちたんだな」
「細いもんな。もっと食って鍛えた方がいいんじゃないか?」
「リュー」
俺は軽い気持ちでチョイチョイとつついたのだが、ひも龍はイクラよりも小さな黒い目を決壊寸前まで潤ませた。うるうる。何だか急に胸がギュッと締めつけられた。
「……何か肉でも食わせてやるか? そしたらもっと大きくなるかも知れないし」
「ひもって肉食うのか?」
「だからカケル……」
「それより、こんなのはどう?」
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