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「約10日間かな。あっという間だったけど、咲苗ちゃんと同じ病室で良かった。一緒にリハビリしたり、キーボードの練習をしたり、色々話したり、楽しかったよ。本当にありがとう!明日バタバタだから、ゆっくり伝えられないかもと思って、今日伝えたよ。転院先でも手術あるけど、乗り越えるよ!実はもう次の目標は決まってるんだ!」
「え!?さっき目標達成したばっかりなのにもう次の目標決まってるの?すごいね!ちなみにその次の目標は何?」
「秘密!」
「えー?教えてくれないの?」
「うん!またどこかで会ったら伝えるね!だから、卒業したら日本に帰ってくるんだよ?」
「うん!」
「あ!それと、日本にいるうちに、ちゃんと拓真くんに連絡してあげた方がいいと思うよ」
「急になんでその話題?また、たくちゃんと話したの?」
「うん。昨日たまたまロビーで会ったからね。彼はきっと、咲苗ちゃんのことを病気だからって嫌いになったりはしないよ。だから、今まで連絡ができなかった事情も含めて、咲苗ちゃんからちゃんと話した方がいいと思う」
「でも…」
「ごめん。実は口が滑って、同じ病室だって言っちゃった!」
「えー!?同じ病室だってこと、言っちゃったの?それじゃあ日本にいるって分かったし、病気のことも…」
「いや!さすがに病気のことは言ってないよ。今回はたまたま喉の調子がちょっと悪くて検査入院だって言っておいたから。でも、拓真くんと話してて、咲苗ちゃんのことを今も待ってるんだろうなぁって思った」
「いや、だってもう4年経つんだよ。待ってないよ…。検査入院、かぁ…」
「またウィーンに戻るってことも伝えた」
「そっか。病気のことを隠してくれてありがとう。なんか不思議な感じがするんだけど、片野くんって随分前からたくちゃんと仲が良かったんじゃないかってくらい自然と話してるよね(笑)」
「俺、学校とかあまり行ってないから、同じ年齢の子と話せるのが嬉しいんだよ。咲苗ちゃんもそうだけど、拓真くんも話しやすい。ほら、大体病院では年上か随分下の小児科の子たちだからねー」
「そっかぁ。もっと話したかったね。たくちゃんとも、もっと仲良くなれそうだったし」
「確かに。ライバルとしてもっと仲良くなれそう」
「ライバル?」
「いや、なんでもない(笑)あ!そうだ。今度は咲苗ちゃんが目標を達成する番だよ。俺が伴奏弾くから、『ふるさと』を歌ってくれる?」
「分かった。やってみるね!」
2人は、病院のロビーへと歩き出した。こうやって一緒に歩くことも、最終日だと思うと途端に寂しくなった。
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