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15.信じる
翌日。この日は快晴で、もうすぐ6月のわりには夏のように暑いほどだった。
「さなー!ちょっと早いけど退院おめでとうー!」
明るく笑顔いっぱいにやって来たのは、幼稚園と小学校が途中まで一緒だった「仲原 絵美」だ。もう入籍しているため、「池内」という苗字になっている。幼稚園の頃から睫毛がとても長くて可愛らしい顔つきだったが、メイクをしてさらに睫毛に綺麗なカールがかかり、より一層可愛らしさに磨きがかかっている。
「絵美ちゃーん!久しぶりー!」
高校2年生の文化祭に来てくれた絵美とは5年ぶりの再会だった。
「さなちゃん、ヤッホー!」
そしてもう1人。「池内 颯汰」だ。こちらも一緒に文化祭に来てくれたので5年ぶりだが、身長がだいぶ高くなっていて、男性らしくなっている。
「颯ちゃん!?大きくなった?」
「ハハハハ。高校でグーンっと背が伸びたからねぇ」
花束を持って来た絵美の指からキラリと光るものが見えた。
「ちょっとー!指見せて?」
「エヘヘ。結婚指輪♡」
「キャー!なんか感慨深いよ、ほんと。2人共幸せそうで嬉しい♡」
3人が再会すると、不思議と当時の幼い頃のように戻った感じがして、人見知り時代ではなく社交的時代の咲苗が出てくる。百合子がやって来ると、とても賑やかな病室に驚いた。昔話をしてはギャハハと笑う咲苗は久しぶりで、とても嬉しくなった。
「急遽俺も行けることになって、一緒に行こうってなったんだ。このメンバーだとあと1人足りない感じするよね」
「拓ちゃんでしょ?でも、ほら、さなはまだ病気のことを話してないから…」
「そっか。そうだったね」
「次日本に帰って来たら話すの?」
「うん。タイミング見て話そうかなって考えてる。いつかは分かることだし…」
「そっか。その時は絵美も俺も一緒にいたほうが話しやすかったりする?」
「そうだね。さなが話しやすいんだったら私たちも一緒にいるよ」
「ありがとう!とても心強いよ」
「高校からずっと秘密にしてたなんて、知らなかったから…もう1人じゃないからね」
百合子は、果物の準備をしながら3人の会話が聞こえてきて、ついに拓真にも病気のことを話すと決意した咲苗について知ることができ、ホッとした。ずっと1人で抱え込んできた姿を見てつらかったので、絵美や颯汰の優しさがとても有り難かった。看護師と介護士の職に就いている2人は、さすがというほど病気の知識が豊富であり、患者の気持ちに寄り添ってくれている。だからこそ咲苗にとっても拠り所になっていて、ギャハハと何もかも抱え込んでいたことを忘れて笑えるのかもしれない。
3人の時間はあっという間に過ぎた。もうそろそろリハビリの時間になる。
「そうだ!榎本先生から聞いたよ!歌えるようになったんだって?是非聴きたいなー」
「そうなんだね!でも、拓真より先に俺たちが聴いていいの?」
「あ!一緒に帰りながら歌ってた相方がいないとね!今から呼んじゃう?(笑)」
「ちょっと2人共(笑)」
「冗談よ。それは、私たちの結婚式に取っておくから」
「へ?結婚式で歌うってこと?いやいや、絶対無理だよ!人前で歌うのが無理なのに」
「大丈夫!そんなに大勢で豪勢な結婚式じゃないから。親戚と共通の友達のあなた達と真紀を呼んだアットホームな感じの結婚式だしね」
「あ!真紀ちゃん、懐かしいー。今どうしてるの?」
「そっか、知らないのか。真紀は、2人の子供のママよ」
「えー!?2人の子のママなの!?すごいね!もうそんな年齢になるのかぁ」
「あ、今思い出した!中2の時、拓真と5年ぶり再会したその日に、『Believe』を演奏して、息ぴったりだったんだよな。あれ、鳥肌が立ったよ!」
「そうそう!2人の絆を改めて感じたよね。だから、結婚式で再会したその日に演奏してもいいのよ(笑)」
「いやいや、それは練習しないとさすがに無理だろうけど。もしその前にたくちゃんと再会するようなことがあったら考えておくわ」
「よし!考えといてな!相方にも伝えて練習日考えておいてって先約取っておこうかな!そしたら再会もできるし、一石二鳥じゃんね!」
「そんな再会の仕方ある?(笑)」
ギャハハとまた大きく笑い声が響き渡る。榎本先生が実は病室を通りがかっていたらしく、賑やかで楽しそうだったねと後日言われて恥ずかしくなった。
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