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落ちてきた。
俺が。突然空から。俺が。
待て待て待て。俺は今混乱している。そうだ、情報を整理しよう。
俺はとある考えが頭から離れず、それを行動に移すか移さないかで、一人夜道を散歩していた。そして、彼女の家の近くの公園に身を落ち着かせていた。俺を照らす満月を眺めていた。その時突然、何かが落ちてきた。木に突っ込み枝とか葉っぱがクッションになったようだが、普通だったら普通に死んでいるところだろう。どの高さから落ちたかは知らないが。そして死なれても困るけれども。月明かりに照らされたそいつは、俺と同じ顔をしていた。いや、少し老けている気がする。
情報を整理してみたところで、やはり意味がわからない。
「痛たい。空から落ちるとか聞いてないんだが。これで死んだらどうしてくれるんだ。……ん?」
俺(?)と目が合う。さて、どんな反応を見せるのか。
「あー、お前って俺?」
動揺するでもなく、本当にただの確認作業のように聞いてきた。それにしても、やけに冷静だ。そして、よく考えるととても変な質問。
「俺も、お前のこと現在進行形で俺かと思ってはいるが、意味が分からない。そんなことあり得るのか?それに、お前は俺を目の前にしてやけに落ち着いているな」
「俺はお前も落ち着いているように見えるが?」
「俺は内心混乱している。お前はそういう風には見えない」
「そうだな。わかっているよ。お前は俺だから」
ややこしい。だんだんイライラしてきた。
「この状況の理由がわかっているなら俺にもわかるように説明してくれるとありがたいんだが」
俺の怒気が伝わったのか、そいつは俺をなだめるように言った。
「まぁ、そうなるよな。説明する前に一つだけ質問させてくれ。今日は何年の何月何日だ?」
再び変な質問。タイムスリップでもしているのかこいつは。まぁ、空から落ちてきたんだ。たとえそうであってもおかしくは、ないか?
「はぁ、2022年9月25日……いや、12時を回っているから26日だ。それが?」
そいつは笑みをこぼした。
「あぁ、良かった。間に合って。……お前も可能性は考えていると思うが、率直に言う。俺は未来から来た」
確かに考えはした。しかし、やはり突拍子もない話だ。本来ならこれを信じたら笑いものだろう。だが、二重否定になるが状況が状況だ。俺はそいつの次の言葉を待った。
「現在から30年後、2052年9月26日から、今日の俺に会うために」
「それじゃあ、30年後にはタイムマシンができているってことか?思ったよりも早いな」
「公的ではないがな。闇社会の人間が作っている。あることがきっかけで知り合いになって、最終試験段階で使わせてもらった。だが、これはもう半分は完成と言っていいだろう」
「どうして。そんな危険なこと――」
「危険を冒してでも、俺にはやらなければいけないことがあった。今日、この日の俺に。もうわかるだろう、お前なら」
そいつは静かに懐から拳銃を取り出し、銃口を俺に向けた。
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