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1.
真っ暗な部屋に、外灯からの光だけが差し込んでいる。静かな部屋。
時折、前の道路を走る車のエンジン音が聞こえるが、それも通り過ぎればまた無音。
何もない部屋に、わたしがひとり、寝ている。わたしだけ、存在している。
重い頭で、ぼうっと天井を見つめる。天井に口があったらお話できるのに、なんて考えながら。いや、想像すると怖いからやっぱりキャンセルで。
誰か会いに来てくれないかな、誰かお話してくれないかな、と瞼の裏の暗闇を見つめる。
……ああ、だめだ。やっぱり眠れない。
――コッコッ
ふいに、窓から軽くて小さな音が聞こえた。風で揺れたのかとも考えたけど、今日は殆ど風が吹いていなかったはず。
それなら、もしかして寂しがっているわたしの前に、可愛らしい子猫ちゃんでも尋ねてきてくれたのかな? なんてありもしないメルヘンな事を考えていると、
――ガリっガゴっ
窓が大きな音を立てて、乱暴に、無遠慮に開かれた。
窓枠に足をかけて「よいしょっ」と誰かが軽やかに入ってくる。こんな夜中に、窓から入ってくるなんて、どう考えてもまともな人じゃない。
侵入者はキョロキョロと部屋の中を見回すと、部屋の隅に歩いていく。
誰なんだろう? 何をしているんだろう? と布団に身を隠しながら、様子を窺う。衣擦れの音で気付かれるかも、とドキドキするが、侵入者はこちらになど気が付かないらしい。
何が起こっているのか分からず、動けないで布団に口元まで隠すわたしをよそに、侵入者は「こんなもんでいいかな?」と部屋の隅っこにしゃがみ込んで、ゴソゴソと何かをしている。
……そうだ。
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