ウラヌスのダイヤモンドダスト

1/4
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
 私はいわゆる、雨女というやつだ。それは私の生まれに関係しているのかもしれない。私の生まれた星は、絶えず雨の降る星だった。多くの観光客がその雨見たさにやってくる。あまりにも激しい雨が、その惑星の中心に向かって降るさまを、多くの人は安全な場所から眺めるのだ。  雨はやがて結晶となり、ゆっくりと中心部へ落下する。そして粒子の細かい“ダイヤモンドダスト“が見られるのだが、観光客はこの“ダイヤモンドダスト”を目当てに来ている。それを肉眼で見ることは人類にはまだ不可能だから、正直わざわざこの星に来なくても探査ロボットが撮ったライブ映像は宇宙中で観られるのに、なぜわらわらと群がるのだろうと不思議に思う。そういう私も、この星の地表にたどり着いたことが一度もないのに、ただこの星に一番近い人工星で生まれ育っただけなのに、ウラヌス出身だなんて言っているから、似たようなものか。  ああ、また降り始めた。私はつくづく、運がないな。いや、運があるのかな。時代や場所によっては、価値のあるものだったかもしれないからね。元素記号で表示すれば同じなのに、結合の仕方で全然見た目も硬度も違う。そして燃えると酸素と結合して気化する。人間も、犬や猫も狐も、その吐く息は同じ。カーボンニュートラルが普遍的価値観となった後の世界では、我々の吐く息も燃料の排気ガスも同じく悪だった。しかしそのガスも存在しないところには植物が育たないし、もちろん我々動物との共生関係そのものが存在しないんだ。  果てしなく続く鉱物と気体だらけの世界。そしてその周りを覆い尽くす宇宙空間。生命が存在するということが不思議でならない。この鉱物のシャワーを眺めていると、ふとそんな考えが脳裏を掠める。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!