それは祝福、あるいは

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この地方にしては珍しく、蒸し暑いと感じる夜だった。 真夜中になっても眠れず寝返りを打っていると、犬たちが騒ぎ始めた。 完全に目が冴えてしまい、しかたなくのろのろとベッドから起き上がる。 窓を開けると、犬たちの鳴き声にまじって地の底から響くような音が聞こえた。 それは徐々に近づいてきた。地面からではなく、空から。強い光をともなって。 妻のモリーもベッドに上体を起こして、何事かと窓の外を見ている。 次第に近づく光に恐怖を覚えたが、その場に縫い付けられたように私は窓のそばから動くことができなかった。 それはブドウ畑の向こうの、ヒルソンの家のすぐ近くで爆ぜた、と思った次の瞬間には衝撃波が襲い、私は床に倒れた。 「ジョセフ、大丈夫?」 とモリーがこちらに寄ってくる。 私は「ああ」と頷き、身を起こしながら、 「ヒルソンが心配だ。様子を見に行く」 と言うと、妻は不安げに顔をゆがませた。 「夜が明けてからにしましょう。なんだか、とても。嫌な感じがするの」 モリーは身震いする。 私は「それならなおさら様子を見に行かないと」と食い下がるが、 「お願い。今はここにいて。夜が明けたら、ヒルソンの家に行きましょう?」 モリーは必死に懇願するような目を向ける。私は仕方なく「わかった」と答えた。 ヒルソンの無事を祈りつつ私たちはベッドに入ると、モリーは不安そうに私の手を握った。
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