それは祝福、あるいは

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翌朝、朝食を済ませると、さっそくヒルソンの家に向かった。 ブドウ畑を超え、丘の上にあるヒルソンの家に着くと、年頃の少女が玄関先で犬に餌を与えていた。 私は彼女に声をかける。 「おはよう。ヒルソンは中にいるかい?」 「おはようございます。はい、お茶を飲んでいますよ」 家の中に入ると、ヒルソンはテレビを見ながら紅茶を飲んでいたが、こちらに気付いて口を開く。 「やあ、ジョセフ。今日は早いな」 「夜のことが気になってな」 「夜?」 私はヒルソンの向かいの椅子に座る。 「隕石が落ちてきただろう」 「ああ、そうだな。畑に被害はなさそうで良かった」 淡々と言うヒルソンに、私は驚き目をしばたかせた。 私でさえ恐怖を感じたのに、自分ではなく、畑の心配をするとは。そう告げると彼は笑いながら言った。 「俺もミアも怪我をしたわけでもない。ブドウ畑のほうがよほど心配だよ」 「怖くなかったのか?」 「いや。……正直、昨夜のことはよく覚えていなくてな」 ヒルソンは思い出そうとするようにあごひげをいじる。 私が口を開こうとしたとき、ミアが犬と共にダイニングに入ってきた。 「父さん、そろそろ。畑の様子を見に行こう」 「ああ。そうしよう、ミア。隕石の破片が落ちていないか、一応、確認をしないとな」 茶化すように言って、ヒルソンはミアと共に畑へと向かっていった。 一人残された私は納得できぬまましばらくそこに座っていたが、(かぶり)を振って、自らの畑に向かうことにした。
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