ツバキ病

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 彼はよくSNSに、仕事の合間や休日に撮った写真をアップしていた。勿論彼自身が撮っていたから、彼の姿は映っていない。  けれど私は、その投稿がとても好きだった。テレビの向こうで、私とは全く違う世界にいる彼。決して交わらない平行線を歩んでいるはずの彼。しかし、彼が何気ない風景を写真に収めているのを見ると、自分と同じ世界にいるのだと、確かに息をしているのだと感じてわくわくした。  私は彼の投稿が上がる度に、その写真の場所と同じアングルで写真を撮りに出掛けた。同じ場所に立っている、それだけで、彼のファンで良かったと思うのだ。 「着きましたよ」  車を停め、ボストンバッグを開く。中に入れられた彼の頭を抱え、私は言った。 「ごめんなさい、暗い所へ押し込めて。でも、ここだけは、お墓に入れられてしまう前に見せておきたいと思って……」  彼が写真を撮った場所で、唯一行っていない場所があった。それは、彼が幼少期によく遊んだと言っていた公園だ。  私は彼と共に車を降りようとしたところで、はっとした。  普段は閑散として、池の鴨たちがちらほら見えるだけの公園。ところが今日に限って、多くの人でごった返している。その理由は、彼らの服装が物語っていた。 「今日はハロウィンか……」  季節の行事なんて、薬局のポップを作っている時にしか考えたことはなかった。  でもこれは、良い機会かもしれなかった。
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