Memorable ～思い出と嘘の間で始まる愛～

非情な結婚

「誰って、誰がいるんだ。お前と俺」
表情を変えることなく、紅茶に視線を向けたまま伝えられた言葉に、私は大きくため息をつく。

目の前の彼、大友秋久は由緒正しい家柄に生まれ、頭脳だけにならず、高い身長、見事な造形の顔。
神様はどれだけ不公平なんだろう。そう思わずにはいられないほど完璧な人間だ。

昔からプライベートも派手で、隣にはモデルや女優など数多くいて、有名人と付き合っていたこともあるほどだ。

そんな人が何を血迷ったのだろうか。そう思うのは仕方のないことだ。

「申し訳ありませんが私たちって結婚をするような間柄でしたか？」
気持ちを高ぶらせないように意識をしながら私が声を発すると、秋久は「ちがうな」それだけをはっきりと答えた。

その言葉に唖然としてしまい、私はただ彼を睨みつけたい気持ちでいた。
しかしできるわけもない。