彼の妻になるということ

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私はもともと、大友家に仕える中で、知識としてマナーを学んできたが、やはり実践するのは全然違うと痛感した。食事が終わる頃には、ほっと息を吐いていた。 「古都、もう少し飲むか?」 「いえ、これ以上飲んだら酔っちゃいます」 つい、いつもの言葉遣いが戻った私に、秋久はため息をついた。 なんとかマナーも無事にこなせたかな、そう思って安堵した私は、外の夜景に視線を向けた。キラキラと輝くビルの灯りが美しい。 こんな空間に自分がいることが信じられず、さらにはその目の前に秋久がいるという現実が、さらに非現実的だった。 私はそっと自分の手に視線を落とす。すると、もうひとつの手が重ねられ、その後、秋久の指がそっと手の甲を撫でた。 彼の指は私の手を優しく握りしめ、左手の薬指をキュッと摘んだ。 「秋久?」
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