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私の問いに、彼は何も言わず、ただそのまま数秒間、私の指を撫で続けた。そして、突然彼はポケットから黒い光沢のある箱を取り出した。
それが指輪だということは、一目で分かった。箱の中身を想像せずにはいられなかった。
もし指輪だとしても、便宜上必要なものだと分かっている。パーティーに妻として出席する以上、指輪がなければ周囲に示しがつかないからだ。
だから、きっとそれも必要なもので、私に渡されるのだと理解していた。
そうは理解していても、ディナーの席で優しく手を握られ、箱を差し出されるその状況に、私は何も言えなくなってしまった。
「古都、強引な結婚かもしれない。でも……」
秋久はそう口にして箱を開けた。そこには、見たこともないほど輝く指輪が収められていた。
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