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「だから言ってるだろ? 俺と結婚してって」
「もう、いい加減にして……」
つい昔のようにため口が出てしまい、慌てて口をつぐむ。昔はこんなにつかみどころのない人ではなかったのに、いつからこんな飄々とした性格になり、本心を見せなくなったのか思い出せない。
しばらくの無言が続き、なぜか居心地が悪くなった私は、この場から離れようと立ち上がった。
「古都さ、お前本当はこの家の仕事をしたくなかっただろ?」
「え?」
その言葉に、秋久に背を向けていた私が、ゆっくりと彼の方に振り返る。
さっきまでとは違う、真剣な表情に私は言葉を失ってしまう。いつからそのことを見破っていたのだろうか。
「本当は他に興味があったんだろ?」
「何を言ってるの……」
確かに私は経理や会計にまったく興味はなかった。
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