1133人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ
そうは思っていても、優しく指に触れながら、ディナーの席で出されたその箱に私は何も言えない。
「古都、強引な結婚かもしれない。でも……」
そう口にした後、秋久は箱を開ける。そこには見たこともないような輝きを放った指輪。
パヴェダイヤモンドが周りにちりばめられ、センターストーンが存在感を放っている。
「こんな立派なもの、もらえない」
手を引っ込めてしまった私だったが、その手を秋久が引き寄せる。
「はめてくれ」
まさかそんな頼まれるなど思っていなかった私は、驚いて彼を見つめた。
真剣そうな瞳に秋久の妻ならばこれぐらいの物はしていなくては、彼に恥をかかせてしまう。
そう思いなおす。
「外に出るときだけにするから」
人に会わないときは必要ないし、万が一傷でもつけてしまっては大変だ。
「それでいいから」
最初のコメントを投稿しよう!