認めたくない

18/25
1123人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ
そう名前を呼ぶと彼はエレベーターの中なのに、優しく頬を包みキスをする。 激しいものではなく、触れるだけといえばそうだし、拘束もされていないのだから、拒否をしようとするといくらでもできたはずだ。 しかし、私はその甘い熱に身を委ねてしまう。 キュッと彼のシャツを握ると、秋久が私の後頭部を引き寄せキスを少し深くする。 「古都、大切にする」 まるで本当の恋人のようなその甘い言葉に、泣きそうになってしまう。 静かに少しだけ唇が離れ、瞳を覗き込まれる。今すぐにでもまた触れそうな距離。 「キス、まだ嫌?」 嫌じゃない自分が怖くて仕方がない。秋久は私を利用するためだけだとわかっているのに。 でも……。 「やっぱりこれも失敗だな」 自嘲気味に言った秋久の言葉の意味はわからない。でもここで否定するきもちにもなれない。 言葉では塔底言えずに、私は視線をそらして少しだけ首を振る。 「古都?」
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!