小さな花は枯れて

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昔から旅行番組が大好きで、いつか世界を一周したいという夢があった。しかし、現実はそううまくいかないし、決められた道を歩むのが普通だと理解している。 一緒に育ったとはいえ、世界を飛び回る秋久とは別次元の人間だと今はよくわかっている。 「そんなくだらないことを言いにきただけなら、早くアメリカにお帰りください」 「俺、今はアメリカじゃないよ。どこにいるかも興味なかった?」 呆れたように言われ、その言葉に私はギュッと唇を噛んだ。 「そうね」 ただ言葉がこぼれ落ちただけだった。肯定する気も否定する気もなかったが、秋久への興味のないふりをすることは、もう何も考えずにできる自分に少し驚いた。 「だな、お前は薄情だもんな」
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