家族

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家族

 アカはアカが拾われた時のように、火のそばに大きい子供も寝かせた。二人ともガリガリで、少しでも目を覚ました時にたべさせるように、アカは木の実を煮込んだ雑炊を作った。  二人が起きると、雑炊を食べさせ、また眠り、2日ほどたつと二人ともきちんと起きていられるようになった。  そこで、ヤギの肉の干したものを火であぶり、出してやった。  飢えた子犬のようにガツガツと食べる様子をアカはじっくりと観察した。 『このままこの家にいさせていいものかどうか?』  二人とも男である。アカはローゼンから家族を増やすことを勧められていた。 『性質の良い若い男が来たら家族を作って森で生活すると良い。アカがいくら強くなったとはいえ、女一人では危険だったり寂しかったりするからな。』 『家族の増やし方はヤギを真似すればいいんだ。』  アカは、年長の方の男に名前を聞いた。自分が話せないことを告げぬまま、地面に質問を書いて、答えさせた。  年長の男はなんと、ローゼンと名乗った。アカと同じ19歳だとも言った。  弟はローガン。まだ10歳だった。  アカは、ローゼンに両親はどうしたのかを地面に文字で書いて聞くと、ローゼンは小さい頃に孤児院に捨てられて、8歳でそこを出され仕方なく両親を訪ねると、弟が二人増えていて両親は病気で間もなく亡くなったという事だった。  平地にいても食料がないので、夏の間に森に入ってきていたらしい。だが、森での生きるすべなど知らないローゼンは夏の食料のある間は何とか過ごせたものの、弟たちを連れたまま冬を迎え、凍えて倒れていたのだった。  アカは、よく観察をして、多分アカが話せないことには気づいているが、ローゼンが話す様子などからは、食料をそれ以上求めたり、アカを襲っていろいろと要求する様子もないので、しばらく一緒に暮らすことにした。  ローゼンとローガンに、木の皮を叩いて作ってあった柔らかい繊維の服を仕立て、ヤギの毛皮を着せた。  生きていくための知識をローゼンとローガンに教え込んだ。  『玉虫の国』の子供たちはみんな雑草の様に扱われて生き延びてきている。その為、生きるための知識は二人とも貪欲に学んだ。  家畜の世話なども段々に教え、家族を増やすならヤギの真似をしろと、老、ローゼンが言っていたことを若いローゼンに伝えた。  若いローゼンは平地にいたため、アカよりはその辺の知識は持っていた。  アカが構わなければ、家族を増やすのを手伝うのは構わないとローゼンは言った。最初はアカが多少苦痛を伴うことも説明した。出産もヤギよりは少し大変かもしれないと話した。  アカは承知し、暑い日が続くようになった頃、一人の赤ん坊が生まれた。  弟のローガンは12歳までは一緒に住んでいたが、やがて5kmほど離れたところに良い洞窟を見つけ、そちらに移って行った。移るときにはヤギを一つがい分けてやった。アカの家と同じように木でカモフラージュした家と家畜の洞窟を作った。困ったことがあれば兄夫婦を頼ってきた。  捨てられてしまった子供たちはやがて何年もかけて、森の中で家族を増やしながら、家畜も殖やし、やがて、一つの集落ができるほどになった。  その集落のあつまりには必ず、この集落の始まりとなった老、ローゼンと初めて家族を増やしたアカの境遇をあきらめなかった話が語り継がれていくのだった。    
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