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ローゼン
ローゼンは、アカを拾った時の事を話し始めた。
寒い時期の今、この何日かは雪が降り続き、外に出られる状況ではなかったので、ローゼンはアカに自分の事と一緒に、まずはアカを拾った所から話を始めたのだ。
「アカは、今いる洞窟の裏側の丘でひろったんだ。」
「雪で埋まっていたからうっかりしたら気づかなかったかもしれん。」
「何かもっこりしているから手を突っ込んでみたら、アカの腹の下だった。それでそのまま持って帰ってきたってわけだ。」
アカは両手を合わせて、ローゼンにお礼の意を示した。
「いいんだ。わしはついこの間まで、孫と一緒に暮らしていたんだ。」
「一人になってさみしかったから子供ってわかった時は嬉しかったよ。」
「孫はな、最初はわしの息子夫婦と街で暮らしていたんだが、息子夫婦が病気で死んでしまってな。わしが森で暮らしていることを知っている近所の人が孫を森まで連れてきてくれたんだ。」
「ただ、息子夫婦が死ぬ前からろくに食べていなかったみたいでな。そうだな。丁度今のアカみたいにガリガリだった。」
「それに平地の暮らしに慣れていたから地面で寝たこともないしな。一緒に狩りをしたり、森の木の実をとったりするのも教わったことがないからできなかったし、やりたくなかったみたいでな。」
「親が亡くなってしまって、気持ちも持たなかったんだろう。寒い時期が来るとあまり食べられなくなってアカを拾う一週間前に弱って死んでしまったよ。」
「わしは昔から人といるのが苦手でな。」
「ずっと森で暮らしている。森だと家畜を飼うのも平地ほど難しくはない。」
「とりあえずエサになる草は暑い季節には沢山あるからな。」
「暑い季節の間に、子供を産ませて、翌年までに大きくするんだ。」
「草も干してから洞窟に積んでおく。」
「今は、別の洞窟で寒さをしのがせている。飼っているのはヤギだ。4頭いる。多すぎてもエサの世話が大変だからな。」
「大抵3代にわたって飼っていると冬の干し肉も毛皮もこまらない。」
アカは、ローゼンに、
『食料や着るものは自分がいても迷惑にならないの?』
と、地面に書いて聞いた。
「なぁに、アカが食べるくらいは大丈夫だ。それに、お前は森で暮らしていたようだから、もっと色々と教えてあげよう。」
「もう少し大きくなれば罠だってかけられるし、家畜の上手な飼い方も教えてあげよう。」
「わしは人間が嫌いだと言ったが、一度孫と暮らしてしまったら、一人はさみしくてな。もう年寄りだし。わしが死ぬまでに、アカはわしから色々吸収するといい。」
「そうすれば、もしわしが死んでも一人で暮らしていかれる。」
アカは嬉しそうに微笑むと、ローゼンの大きな、暖かな手に自分の手を乗せた。
『ありがとう。一生懸命覚えます。』
『冬の食べ物の作り方を教えてほしい。』
と、地面に書いた。
ローゼンは一人で捨てられても、知らない人間に拾われても、前向きに生きようとするアカが好ましく思えた。
「とりあえずは、一週間。わしのすることを見て、できる事から始めてくれればいいさ。」
ローゼンはそういうと、床に焚いた火の上に今や貴重な金属の鍋をかけた。
そこには、夏に取った木の実とウサギの肉が入ったスープがあり、火の上で段々といい匂いをさせていくのだった。
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