15年後

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15年後

 アカは19歳になっていた。16歳の時に生理がきて、ローゼンが手当の方法を教えてくれた。そして、もし、森で男性にあった時、襲われて奴隷になどされないように、普段から少年のように髪を短くし、胸が目立たないように腹に一枚木の皮で作った布を巻かせた。  ローゼンはアカが17歳の時に、亡くなった。  アカは大層悲しんだが、生前からローゼンに 「わしが死んだとしても悲しみすぎてはいけない。」 「わしはもう年寄りだ。わしが死んだら、穴を深く掘って埋めてくれ。」 「そして、今まで教えたことを忘れずに元気に生きていくんだ。」  両親に捨てられてから雑草のように暮らしてきたアカを育ててくれた恩人である。今では随分体格も良くなり、森で働くことで、平地で食べられていない男性をもまかしてしまうほど、筋力も付いていた。  アカは悲しみを追いやり、ローゼンを墓に埋めに行くことにした。  住まいとしている洞窟より、3Kmほど離れたところにローゼンの孫のお墓があった。ローゼンはそのあたりにあった一番大きな石を目印にしていたので、アカもそこを深く掘り、ローゼンの遺体を穴の底に転がした。  しっかりと土をかけて、まだ、森にいる小さなウサギやイタチが穴を掘り返さないようにした。  ローゼンが亡くなる少し前から平地の生活がますます苦しくなり、森に入ってくるものも多くなっていた。アカたちは元々森の奥にいたのだが、それでも、そこまでくる者たちもいたのだ。  そこで、ローゼンとアカは家畜を住まいの近くに土を切り出した壁を積んで移動させ、家畜泥棒に合わないような工夫もしていた。  家と家畜の声の周りには自然に生えたようにぐるりと狭い感覚で木を植え、人が入れないようにしてあった。家も家畜の小屋も蔦を這わせ、一見普通の森の風景に見えるようにしていた。  出入りするときははしごをかけて上まで登り外に飛び降りた。外から入るときは、巧みに木を登り、屋根として隠してある蔦をそっとかき分けて入った。    アカの一人暮らしは2年目になった。アカはローゼンに教わったように、暑い時期には骨惜しみなく働き、冬に備えた。  時折、アカのいる洞窟のあたりに平地の人間が見えると、アカは急いで洞窟に戻った。戦うよりは見つからない方が良いとローゼンに教わっていた。  しかし、戦うときの為と、冬の小さな動物を盗るために弓矢を教わっていた。  相手がアカに害をなすものだった場合は戦うことに決めていた。  何度目かの長い寒い時期が来た。  アカは、洞窟を出て小さいウサギの為の罠を仕掛けて歩いた。  念のために洞窟からはかなり離れた場所に仕掛けた。罠を見れば人がいることがばれてしまうからだ。  翌日、罠に獲物がかかったか見に行った時、子供が3人かたまって倒れているのを目にした。今までにも同じようなことがあり、その子供たちは既にこと切れていたが、今度見つけた子供たちはまだ息があるようだった。  アカは、一番年上に見える子供をゆすって起こしてみた。何とか意識が戻りそうだったので、更に強くゆすった。 「だ・・・れ?」  アカは答えられなかったが、一緒に来いと手まねで示した。 「弟たちを置いて行けない」  そういうので、息を確かめてみた。一人はかろうじて息があったが、もう一人はもう息がなかった。  それでも置いてはいけないと言うので、アカと、その年かさの子どもで小さい兄弟を一人ずつ負ぶってアカの住処まで来た。  まずはアカが家に入り、外にはしごをかけてやった。  年かさの子どもは自分の息のある兄弟を中に入れた。  アカはすぐに火のそばにヤギの毛皮を敷き、小さい子供を寝かせ上からも毛皮をかけた。  そうして、亡くなってしまった小さな子供をローゼンの墓の近くに穴を深く掘って埋めてやった。    
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