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「ねえ、AIハウスに住み替えるって本当なの?それって·····ねぇ、由莉まさか1人で住むんじゃないよね?」
希沙は、勘がいい。勘が良くて怖いときがある。まるで、見透かしているみたい。未来が見える巫女、みたいな━━━━━━━━━。
「そんなわけ、ないでしょ。まあ、大学行かないだけで、一人暮らしできる年齢では、あるけどね。もう、ふたりとも同い年なのにお姉ちゃんみたいなこというなぁ!·····ありがとね」
私の親は、機能不全家族。
『ネグレクト』ともいうのかな。
お金は、ある。学費も習い事も何不自由なく、着たい服もあるし、こうして友達も恵まれている。
ガラの悪い不良とは無縁だし、いつも執事やメイド達が守ってくれる。
だから、不満は、ない。不満·····。
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「由莉、父さんな、母さんとはもう離婚成立したんだ。悪いが、母さんと会う時はひとりで会ってくれ」
高校2年生の受験を控える私に、言う言葉じゃない。
塾の宿題をしようと、部屋の机に向かったところを廊下で父親に呼び止められた。
父親は会社の重役で、仕事ばかりで母を放置して、銀座のホステスのところへ行く。私と過ごすことがほとんどなかった父親。
私は執事やメイドとの記憶しかない。誕生日プレゼントは、豪華だけど、そうじゃなくて。そうじゃないのに。
「お父さん、あの、私ね大学・・・・・・・」
「大学は好きにしていい。あと由莉、おまえ、この体験AIハウス、に引っ越せるか?」
私は、なにかの糸が切れるような、プツッとなにかスイッチが、切れた音が聴こえた。
「え?ここに居ちゃいけないの?」
「お母さんと住むのは、難しいだろう。あいつは福島県の地方の仕事引き受けて、あっちに行くから。友達と離れたくないだろう?」
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