ブルーバード

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 美智留はホテルのカフェ勤務を辞めることにした。アルバイトで雇われた身とはいえ、青柳堂の一人娘であり、その青柳堂の使用人である凛太郎がホテルに迷惑を掛けたから、責任を取らせてほしいと自ら申し出た。  凛太郎が青柳堂を辞め、美智留もホテルを辞める。惨めで情けないことでも、美智留にとっては凛太郎との共通点ができたことがたまらなく嬉しかった。現に、美智留が店を辞めた日、その表情はどこか晴れやかだった。辞めた翌日から、美智留は小説を書くのに没頭した。右京が住むマンションでは部屋が余っていたので、右京自身も美智留専用の部屋を与えていた。美智留は最低限の家事を終えると、部屋に閉じこもり小説を執筆した。 「私がデビューすればきっと凛太郎が見てくれると思うから」そんな健気な思いが美智留を支えていたのかもしれない。右京も何も言わなかった。淡々と静かに美智留との結婚の日取りを迎えるのを待った。
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