ブルーバード

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 しかし、美智留は老舗和菓子店の一人娘である。母を幼い頃に亡くし、その時から父親に「跡継ぎとして店に相応しい大人になるように」と言われ続けてきた。結婚相手は父が決めた人でないと認めない。腕の良い和菓子職人を婿に迎えて、店を継続させるのが父の願いだった。  一方で、父の理想とは正反対に凛太郎に惹かれていく美智留。使用人を婿にするわけにはいかない。だからこの恋は叶わない。叶わない恋だと知っていても止められなかった。父は美智留の想いを知ってか知らずか、凛太郎につらく当たることがあった。掃除が雑だ。飯が不味い。何をやらせても遅いなど、真面目で仕事一筋の凛太郎に対して粗を探しては怒鳴り散らした。高校に行っていない凛太郎は学がない。それも父の癪に障るのだろう。ただそれだけのことが。  その度に美智留は庇った。一度凛太郎を辞めさせる話が父の口から出た時は「そんな理不尽なことをする位なら、私は店を継ぎません」と真っ向から反対した。
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