ブルーバード

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 一か月もしない内に、青柳堂は外資系ホテルとの大口契約を結んだ。外資系ホテルの近隣は日本国内でも有数の観光地であり、アジアやヨーロッパ、アメリカなど多くの地域から観光客が集まる。ホテルの担当者も青柳堂の繊細な和菓子を見て感嘆の声をあげていた。季節の和菓子と定番の和菓子を三品、四品程度ホテル内のカフェに並べてみて、反応が良ければどんどん品数を増やしていくことになった。  美智留自身は、やはり老舗和菓子屋の看板娘として育ったせいなのか、売れ行きが気になりホテルの様子を何日おきかで見に行った。そんなに気になるのなら、いっそホテルのカフェで働けばいいと右京が提案した。右京の会社の取引先でもあったので、頼んでやろうと言った。美智留がそこで働くということは、配達で和菓子を持ってくる凛太郎にも会えるということにもなる。右京はそれを見越して提案しているのか、定かではなかったが、美智留自身も右京の妻とはいえ、家で小説だけを書いて過ごすのは物足りないとも思っていたので、気分転換も兼ねて平日の週二日の日中だけ働くことにした。
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