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「祟られ女は末期の瘡患者?」
「へぇ、ハーン親分。専らそんな噂です。幽霊みたり枯れ尾花ってね。これじゃ小龍川のヤマも終いでしょう」
秋山が残念そうにへへと鼻で笑う。
「ふむ、なるほど、ネタがバレてしまうと興味も失せるというものでしょうか」
「ここ二日ほど、小龍には人が全く集まりません」
「折角噂のおかげで賭場が盛り上がっていたのに残念ですねぇ。予告した怪盗とやらも甲斐がない」
けれども私はおかしなことに気がついた。それは時期だ。
元の噂は祟られていると告げる女が袖を捲れば左腕の沢山の目に睨まれるというものです。確かに重度の梅毒ならばそう見えるのかも知れません。けれどもここ数日、女はあの小龍川に現れていない。一体誰がそれを確認したというのです?
それ以前にそもそも、元々の目撃情報もそれほど多くはないはずだ。そして最近はしばらく現れていなかったはずだ。
それなのになぜ、この今、梅毒という噂がたつ。一体誰が確認したというんだ。
「新しい噂の出所はどこでしょう」
「出所、ですか?」
秋山親分の調査の結果、出所は神津新地だそうだ。祟り女が出る少し前に年期明けの梅毒の女がいたのだとか。本当にそんな事があるものですかねぇ。なんだか出来すぎている。
そして更にしばらく後、また祟り女が出るという噂が広まった。梅毒の瘡などではなく、本当にたくさんの目を腕につけた女が現れるという噂が。
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