プロローグ

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プロローグ

「今は何年だ? 何年の何月なんだ? なあ、頼む、早く教えてくれよ━━」  塾帰り、不意に肩をつかまれ揺さぶられる俺は、あまりの驚きに固まっていた。  いつものように、すっかり暗くなった路地を歩いていると、明らかに正気を失っている不審な老人に絡まれたのだ。  老人はひどく焦った様子で、しきりに今日の日付を聞いてくる。 「2022年の、9月ですけど」  強引に振り払って逃げようとも思ったのだが、老人のあまりにも切実な問いに思わず答えてしまった。  俺の言葉を聞いた瞬間、奇妙な老人はようやく静かになり呆けている。 「今度は二十年も━━」  ぽつりと呟いた老人は、ゆらゆらと揺れながら夜の闇に消えて行った。  一体何だったんだ。あまりにも奇妙な様子の老人について、つい思考を巡らせる。  が、すぐに俺はその考えを無理やり放り捨てた。今は見ず知らずのイカれた老人に使う時間はないのだから。  そうして俺は、急いで家へと帰った。
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