程度の問題

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「〇〇区で傷害事件が起きました。多くの負傷者が出ている模様です」  アナウンサーは書き起こされたばかりの原稿を必死に読む。 「現場の△△アナ」スタジオのアナウンサーの呼びかけで画面が現場に切り替わる。 「はい、現場の△△です。非常に凄惨な事件が起こりました。これから写る映像はとても痛ましい映像です。気分を害する方は視聴を控えください」  カメラはこの凄惨な現場を伝えようと必死で辺りを撮影する。  道路や標識、町中の至る所に血がベットリとこびりついている。辺りにはぐったりと項垂れる人や泣き叫ぶ子供の姿があり、駆けつけた救急車と警察車両のサイレンの音が重なり合って協奏曲を奏でている。 「犯人は2人と見られ、以前逃亡中……」  突然、中継の途中で画面が現場からスタジオへと切り替わった。  ひどいシーンが続いたからではない。  理由はこれから読み上げるアナウンサーの原稿の内容によって明らかになる。 「えぇ、ここで速報です。ここで速報です。つい先ほど、××地方全域で、とても強い地震がありました。とても強い地震がありました。地震の最大震度は7、地震の最大震度は7、被害状況は次の通りです……本日は、番組の予定を変更してお送りいたします」  どこのテレビ局もそうだった。  彼らの犯行がその後報道される事はなかった。    要は程度の問題である。
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