伝説のボクサー

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日曜日の昼過ぎ、私は友人と蕎麦屋で昼飯を食べ、それから二人であてもなく街の中を歩き始めた。 「どうする、これから?」爪楊枝を口にくわえたまま友人が言う「パチンコ屋でも行くか?」 せっかくの日曜日だというのに二人とも特に用事はなかった。 二人とも三十代後半。独身。彼女もいない。まあ、うだつの上がらない似た者同士だ。だから仕事が休みでも暇で仕方ない。 「そうだな」私は前を見て歩きながら答える「時間つぶしにはちょうどいいだろう」 私たちはいま、ドヤ街を歩いていた。いわゆる日雇い労働者が多く住んでいるような場所だ。 今日は日曜日で仕事もなく、昼間から道ばたに座り込んで酒を飲んでいる者もちらほらと居てる。まあ、私たちもそんなに変わりはないが。 すると友人が、森川という名前だが、その森川が急に立ち止まって、道ばたに座り込む一人の男を見ていた。 「どうした森川」私はその男を見ながら尋ねた「知り合いか?」 「いや、知り合いではないが、たぶん、あいつだ、間違いない」 森川は男をじっと見つめながらそう答えた。 その男は我々と同じくらいの年齢で、見たところ小柄で痩せていたが、目だけは異様にぎらぎら光っているように見えた。
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