週末の始まり

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週末の始まり

 僕ら高校生にとって、週末の始まりは金曜日になる。多くの学生が一週間の授業を終えて開放感を抱きながら部活動に励む日常は、西陽が差す海の水面に似た輝きがあった。僕自身も彼らと同じく開放感自体は抱くことができる。だが、僕の放課後は青春とはほぼ遠い帰路を歩くだけであった。    高校生として生きることは集団生活の最上級であり、ここで生き抜ける人材は未来が明るい。逆に、高校生の間に孤独を味わうような人は、社会人になっても変わることなく、弾かれてしまったた付け合わせのにんじんみたいに省かれて、最終的には独りになってしまう。おそらく僕はその類の人間である。    実際のところ、僕は学校生活に馴染むことができていない。元々人見知りだから人と関わることが苦手だが、それ以上に邪魔をする感情があるから、無意識に人を避けてしまうのだった。    僕は生まれてこの方、女性に対してまるで興味がない。他の男子生徒は女性に対して一種の興奮を覚え、同級生の女子に対して下心を抱き、誰々のおっぱいが大きいなどエッチな話題を交えながら会話をして盛り上がっている。そこが、僕の場合はしゅんと萎れてしまうのだ。おっぱいが大きい女性を見ても僕は何とも思わないし、ましてや興奮もしない。他の男子生徒はおっぱいが大きい女子が走ると「揺れている」などとはしゃいでいるが、僕は全くはしゃがない。ただ、女性が走っているだけ。軽自動車が舗装された道路を走っている日常とさほど変わりがないと感じてしまう。だから話が合わないし、僕自身彼らの話に興味を持つことができなかった。    そして彼らは、前提として女性が好きである。女性が好きであるということは、女性と触れ合いたいと懇望する気持ちがある。それも、常に昂っている状態である。  しかしその渦に飛び込む気持ちが僕には微塵もなかった。別に女性を嫌悪しているわけではない。ただ、本当に興味がないだけだ。そんな僕の歪んだ感情が、放課後という本来は汗をかいたり声を出すために設けられた時間に僕を帰宅する道へと運んでいるのだろう。    友達という友達を作らずまま、僕は十七になろうとしている。  
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