ルーティーン

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ルーティーン

 それから僕は毎日だたっ広い公園の隅にある東屋へ行って、彼がいるかどうかを確かめた。それを続けること三週間。すでに季節は梅雨の時期に差し掛かっていて、カレンダーも一枚めくれていた。    彼に出会ってから一ヶ月と少しばかり。僕はとある法則を見つけた。 【彼は、金曜日の午後だけ東屋にいる】    どういう理由なのか定かでないが、彼が東屋にいるのは金曜日の午後だけだった。言い換えれば、彼は金曜日の午後には必ず東屋にいた。僕が学校へ行っている間の時間はわからないが、もしかすると彼の休みは金曜日なのかもしれない。金曜日になると、彼は自らの創造を形にするためにあの公園へ行って、日陰で涼しい東屋にて何かを書き記しているのかもしれない。それが彼のルーティンならば、僕は彼に会える日は金曜日の午後。    昔、毎週日曜日に放送していたアニメを心待ちにしているときがあった。あるいは毎週月曜日の夜に放送していた医療系のドラマを家族で楽しみにしていたことがあった。一週間。それは短いようで長い時間だが、どこかに定期的な楽しみが混ざっていれば、それ以外の苦痛な日々をなんとかやり過ごせたりする。僕にとって彼という存在は悦楽であり、春の訪れを感じさせるような暖かさを与えてくれるものだった。僕というどうしようもないほど陰鬱な人間にささやかな明かりを授けてくれる、素敵な存在。また会いたい。僕は純粋に彼を欲していた。    もう、恋をしてしまった僕は止まることがない。毎週、彼に会う。彼を見て、彼に恋する気持ちを焦がしていく。それが僕の青春となって水飛沫をあげながら弾けるのだ。
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