思い、思われ、振り振られ。

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「三年生の実行委員長を差し置いて、あたしにタイムテーブルをいじれって言いたいの?」  瞳子が唇をすぼめる。 「ほら、文化祭で歌うとなるとわたやんも緊張するだろうし、オレが前座で盛り上げようってわけ」  千代田くんが明るい声で言った直後、顔をしかめて瞳子が唸る。 「有志のステージ担当は三年の先輩だけど‥‥前座がいた方がやりやすいってうのも一理あるし‥‥今年の文化祭はで特別だから‥‥」  考え込むように腕を組んだ瞳子は、ぶつぶつと呟きながらわたしを見る。同意を求められている気がしたので「千代田くんのあとはプレッシャーだったけど、前座だと思えば嬉しいかも」と、パックのジュースを飲みながら言った。それを聞いた瞳子の視線が、ふいに成瀬のところで止まる。  手摺に寄りかかって上を向き、目薬を挿す成瀬を見たあと、瞳子は意を決したように頷いた。 「ひーちゃんを推薦した責任もあるし、少しでもやりやすくなるなら———やってみる」  ぎゅっ、と握られた手を春の日差しが照らす。  ———あと数ヶ月後には、ステージに立つ。どんな形であれ、推薦してもらった以上は良い演奏をしなくてはいけない。わたしも瞳子と同じように強く手を握り締めた。 「話してたら喉乾いちゃった。飲み物買いにこうかなー」  千代田くんが突然そんなことを言って、瞳子の方を見る。「いってらっしゃい」「モブ子ちゃん、一緒に行こうよ」「は? なんであたしがあんたと———」しばらく言い合ったかと思うと、千代田くんが瞳子の腕を摑んで立ち上がった。 「じゃ、行ってきます」  千代田くんは嫌がる瞳子を連れて、教室の中へと入ってしまった。 「昨日の用事って、洲崎さん絡みかもな」  ポケットから取り出した野菜ジュースに、成瀬がストローを挿す。わたしもそう思う。瞳子が突然謝ってきたのも、告白すると言い出したのも、きっと千代田くんが何か言ったからだろう。
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