Prologue

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 世界的に有名なグラフィティアーティスト、バンクシーは、ロンドンを拠点に活動する、正体不明の覆面アーティストだ。名前や容姿、年齢など、彼の実態を知る者がいない、謎に包まれた存在である。世界各地に現れては絵を描き続け、誰にも気づかれずに姿を消すことから、芸術テロリストとも呼ばれている。  そんなバンクシーに憧れてグラフィティアーティストになった少年と、彼の絵に励まされて歌うことを決めた少女。もちろん、その二人を支えるたちの存在も忘れてはならない。  高校時代という、若さを燃やして駆け抜けたゴールドラッシュのような日々。それが遠い昔のように思えたとしても、彼らの人生がそこで終わるわけではない。  不細工で、恥ずかしくて、やりきれないものがたくさんあった青春の、目が眩むほどのを瞼に焼き付けたまま、これから先も続いていく。  だから私は、光り続ける彼らをいちばん近くで見ていたいと思った。         ———十二月吉日、成瀬桐太郎(なるせとうたろう)  
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