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「俺今日クラス会だから、あと1時間弱しかないぞ」  地央は真直の机の上に、昨年自分が解いた実力テストの問題を重ねて置いた。 「クラス会っていつの?」 「三年の……、ああ、去年の方な」  3年時に一時休学をしている為、今年と合わせて2回三年生をしている。 「岸さん来るんすか!?」 「いや。啓太郎はこれないって」  そう聞いて、真直は心の中でガッツポーズをした。  岸啓太郎は地央の幼馴染で昨年のクラスメイトでもある。  現在は他県に出て医学部に通っている為、地央を独り占めしたい真直としては、嫉妬するレベルに地央と仲のいい啓太郎がいないことはとても喜ばしいことだった。 「あーあ、せっかくの部活もない土曜日なのになあ」  だらしなく椅子に腰掛け、鼻と上唇にシャープペンをはさんで、やる気のかけらも見せない真直の頭を再び地央がバインダーで叩く。 「痛てっ」 「おまえなあ、一応もう一回確認するけど推薦の条件知ってるよな? 評定4.2以上! 他のクラスよりうちのクラスで評定とりにくいのわかってるよな!?」  二人のクラスは入学時からの理系クラスなので、別クラスと比べてどうしても底のレベルが高くなってくる。別クラスでとる4.2以上とはまた意味が違うのだ。  地央はその小奇麗な顔を最大限にしかめると、ドンっと机上の問題の上に手をついた。 「わかってますって」 「とりあえず、俺がクラス会行くまでにこの過去問終わらせろよな」 「いやいや、無理無理」 「無理じゃない!!」 「いや、ガチで!」 「せめてやる気を見せろよ」  ため息をついて見下ろす地央に、真直は何かを思いついたように笑顔を浮かべる。 「地央さんがキスしてくれたら」  真直の言葉に、地央はガックリと頭を落とす。 「ご褒美あるほうがモチベーションあがるじゃないすか」 「……おまえねえ……」 「一回だけ!」  地央はもう一度盛大にため息をつくと、バインダーでまた真直の頭を一叩き。 「痛てっ」  そしてそっぽを向くようにしてベッドの上に腰を下ろすと、 「……あー………、時間内に解答まで終わらせたら……デコとか頬くらいに一回だけ、な」  と、やたら早口で言って単語帳を開けた。  その照れ隠しのような態度があまりにも可愛く思え、自分より一回り小さく華奢な地央を今にも抱きしめたい衝動に駆られる。しかしなんとかそれをこらえると、気合を込めて机に向かった。
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