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「マジか……」
基本的に体育は欠席だと思っていた地央がめずらしく体育に出てきた。
聞けば球技は教師から禁止されているらしく参加できないが、走ることはできるとのことでやっと自習から解放されると喜んでいたのだが……。
校内陸上競技大会の出場競技を選ぶことも踏まえて50M走を測ることとなり、地央が出したタイムは
「6秒2」。
どう見繕っても体育会系には見えない地央が、先に走った真直のタイムよりも速いというその事実に思わず声が漏れた。
地央の運動神経がいいというのは耳にしてしたが、学年が違うとなかなかその能力を目の当たりにすることもなく、ライフルで勝てなかった時の記憶が苦く蘇る。
6秒前半を出すのはクラスでもそう多くはなく、出した人間が陸上部でも野球部でもなく体育欠席常連の地央だけに当然クラス内でも大盛り上りだ。
年上美形キャラの地央へ若干近寄り難さを感じていたらしいクラスメイト達の距離感が少し縮まって、独り占めしていたい真直は微かに唇を尖らせた。
「いや、100Mはそんな早くないから」
すげえすげえというクラスメイトに困ったような笑いを浮かべて答えつつ、真直の傍にやってくる。
めったに見ない体育のジャージ姿は真直達のブラック×ブルーとは違う、前の学年のブラック×グリーンだ。そんなことで年上であることをなんとなく再認識した。
「足、そんな速かったんだ」
「50M走だけな。校陸とかいつもそれで100M出されて負けてた」
「それにしたって、普段あんま動いてないのに反則でしょうよ。あーあ。走るの地央さんに負けると思ってなかった」
「学校休んでる間、結構走ってたからな」
頬を膨らます真直を見て地央が笑いながら何気なく口にした休学中のこと。
真直の心臓の鼓動が少し早くなった。
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