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今日は雨の香りがする。 君と出会ったあの通りを今、歩きながら書いている。 傘なんて使う気がなかったから棄ててしまったけれど、寒かった。 今は季節の継ぎ接ぎに触れているのだろう。 あの海よりも冷たく、何だか独りだ。 近くにあったコンビニには寄らずに、傘なんて買ってやるものか、と少し強がってバス停に並ぶ。 と言っても、独りだった。 体温が下がりきっていた所為か、少しお腹がいたんだけれど、プライドで痛みを殺した。 バスの中は未だ夏の景色を残したいのか、冷気が、人工の冷気が燃えた心を冷やしていた。 ここまで寒いのは、まるで雨の冷たさみたいだ。演出方法を考え直した方が良いと思う。 あのアパートの最寄りへと向かうバス、窓の外。 窓に張り付く雨粒は、ここが地上だということを再認識させた。海底で涙は滴らない。 この空の暗さは、例えるなら、なんだろう。 君の景色とも一概に言えないのかもしれない。前に歌に書いた気がする。とても前に。 ただ、なんだろう。何だか強い孤独感、劣等感があった。 怖いんだ。 何も無いようで、何でもあって、気を抜いたら、堕ちてしまいそうで。 壁がないから、君っていう姿がどこにもないから足が海底についてくれない。 否、それも消える勇気が無かったからか。 昔からそうだ、僕の物語は決まって顧みて終わる。 自分の矛盾を認めて、悪を嘆いて、幸せなハッピーエンドを迎える。 そんなの、イデアであって、人生じゃあない。有り得ない。 自分を見るのが怖いんだ。 君の景色を巡って、自分が壊れてしまうのが。 あの夜明けの綺麗だった海の底に辿り着く未来が。 その時雨が降っていそうで。 今は上がってこない方がいいよ。 僕は今、そっちに行けないし、 傘、買ってないしさ。 僕は君を探している。
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