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また、穴が空いた。 玄く、深く。 どろどろと深淵が溢れ出す音がする。 体に漆黒が伝う。 インクに水滴を垂らしたあの感じだ。 導火線ほど音は立たない。 静かに、誰にも知られず侵されてゆく。 銃弾で撃たれた様ではない。 静かに、言葉に臓器がプレスされてゆく。 そんな、感覚。 珈琲の物語を描いた昨日から、ずっとそうだ。 動けない。 過去に押しつぶされている。 水圧に抑えつけられている。 “ざまあみろ。 自分を愛する事しかできない奴に 他者からの愛なんて勿体無い。 一生依存に苦しめよ。 それがその者の報いなのさ” 僕はその言葉の意味を今、やっと理解した。 自分の保身ばかりになったことを後悔しても幸せは帰ってこない。 反省は誰かの為にすることじゃなかった。 自分が幸せになりたいからする反省なんて、何処までもエゴでしかない。 それすらが、取り返しのつかない自己中心的な思考… 帰ってくると期待する事すら愚かであろう。 そして同時に。 この腐った性格は元には戻らない、と その事実から目を背けていた自分を殺してやりたくなった。 首根っこでも掴んで、今すぐに海の底にでも沈めてやりたい気分だ。 でも、考えてしまう。 どうせ散る花だったのなら 初めから持たない方が良かったのだろうか。 何もかもが諸行無常なら、初めから孤独は独りで背負うべきだったのだろうか。 花の香りを思い出す為だけに詩を書いていた、と言うのか。 僕は、応えを探している。 それを探して、創作を続ける。
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