9/10
前へ
/69ページ
次へ
 間者として北の領域に潜伏中の部下から二つの報告があったと白雪が言いに来た。  一つは北に帰ってきたのは斬火だけではないということ。各地に散らばっていた部隊を率いる隊長達が戻ってきた。  近いうちに南に宣戦布告をするかもしれないのではないだろうか。  そしてもう一つの東にある北が管理している収容所があると報告が上がったとの事。  そこは傀儡の人体実験を行っていた。 【傀儡(カイライ)】  東の長い黒い歴史の中で人工的に作られた存在。肉体と魂を癒着させ、神力も妖力もましてや腕力すらなく神人にも妖怪にもましてや下界の人間にすらなれないただ丈夫に作られた人権も何も無い生きた人形。    傀儡の歴史は翠の父である水神が国を治めた事で一度終止符を打っている。それを北は復活させようと収監している東の民達を人体実験の被検体にしているという。 「傀儡の作り方の書類等の情報は全て水が処分したと聞いた。」  むしろ長い事水神は傀儡を人に戻す研究をしていたと聞く。その研究資料も東の主にしか入る事の出来ない部屋の中にあり厳重に保管されている。現段階で水神以外には入る事が出来ない。  北が独自で研究をしているか又は傀儡に詳しい誰かが東を裏切り北の研究員として実験に参加しているのかもしれない。  人権のない傀儡の扱いなんて最悪なものだ。  発散の為に暴力を振るわれたり、力仕事以外の労働奴隷。見た目は華奢になり綺麗な顔立ちになる為に性玩具としても遊べると人気がある。  身体の部位を切り落としても移植すればどんなに合わない部位でも二ヶ月程度で己の身体に馴染んでしまう。  傀儡の肉は人肉を好む悪神にとってかなり美味である為、移植させては食うと言う人肉製造機にされてしまい地獄の様な扱いを受ける傀儡もいる。  傀儡にされるくらいなら死んだ方がマシ。  大半の上界の住民ならそう思うだろう。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加