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壱
「これより翠様に神力とは何かを説明させていただきます。私【千波】と申します。よろしくお願いします。」
目の前には眩しい程の笑顔の優男。
「・・・・・・。」
朝、宛てがわれた部屋でスヤスヤスヤスヤと惰眠を貪っていた翠を叩き起したのは濡羽色の長髪を束ねた流し目の洋装の男であった。
次の日から神力の使い方を教えろと言った翠は後悔していた。
弾力のあるフワフワの寝具の虜になってしまったからだ。気持ち良すぎて昼までベッドとお友達、何なら親友・・いや、恋人になると誓いを立てた。その僅かな望みさえ優男が登場してから己の夢は儚く散ってしまった。
そして現在、五十平米(約30畳)程度の小さな予備道場にてお勉強中。
「私の枕、布団、ベッド、カムバーック。」
「早速異国語を覚えて大変素晴らしいです。」
褒められても嬉しくない。
そもそもララが教えてくれるのではなかったのかと聞いた。
「あぁ、頭なら・・・。」
千波が作った取り扱い説明書を渡しながらララは別件で手が離せない事を説明しようとすれば、ドォンっと大きな音が外から聞こえた。
「白雪様と手合わせ中です。」
「手合わせって音じゃなくね?!」
明らかに何か大きいものが建物を破壊した様な衝撃音だった。
千波はララと白雪の手合わせはいつもこんなものであると平然とした顔で言った後
「始めますよ。」
と、渡された書物の一枚目を開くよう促された。
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