14人が本棚に入れています
本棚に追加
子猫✨😸💕
夏休みに入ったが相変わらずバイト三昧だ。どうせ彼女もいないので構わないが。
その日は昼過ぎから鬱陶しい雨が降っていた。
傘を差していても濡れてしまうほどだ。少しは涼しくなるかと思ったが、ジメジメして余計気が滅入ってくる。
深夜になり近所のコンビニのバイトから帰宅すると玄関の軒先で子猫がお腹を空かせて鳴いていた。
『ミャオン』
真っ白で、なんて可愛らしい子猫なんだろう。
「だけどゴメンよ。家ではネコは飼えないんだよ」
なにしろボクは生き物が苦手だ。特に猫などのペットは大切に飼っていても十五年しか寿命がない。どんなに愛しても、たった十五年で亡くなるのは堪えられない。
この一年で両親が立て続けに亡くなり、ボクは家にひとりで暮らすようになった。寂しいが亡くなった時の喪失感に比べれば、まだマシだろう。子猫を飼う気にはなれない。
ペットロスなど今のボクには考えられない。
『ミャオン』
けれどもあまりにも鳴くので邪険にもできい。
「おいで、ニャン子」
見た目ではメスかどうかわかないが、仕方なくニャン子と呼んで抱き寄せた。
『ミャオン』
抱きかかえると子猫は嬉しそうにボクの顔をペロペロと舐めてくる。
「ハッハハ、よせよ。くすぐったいだろう。お前も雨が嫌いなのか?」
ボクは恨めしく夜空を見上げた。まだ雨が降り続いている。
「じゃァ今夜だけだぞ。冷蔵庫に何かニャン子の好きなモノがあったかな?」
やむを得ず子猫を家に入れて餌を上げた。
大したものではない。有り合わせのものしかない。牛乳と弁当の残りのご飯に鰹節を掛けただけのネコまんまだ。
けれどもよっぽどお腹が空いていたのか、すぐにペロリと餌を平らげた。
『ミャオ』
空腹を満たしたからか、ボクのヒザの上で丸くなって寝てしまった。
「おいおい」どうしようか。
ペットを飼うわけにはいかないのに。
まさか寝ている猫を雨の降る外へ放り投げるワケにもいかないだろう。
取り敢えず今晩は一緒の布団で寝ることにした。
最初のコメントを投稿しよう!